かつて、ITビジネスと名乗れば投資家たちが熱を上げて、投資をしていた時代「ITバブル」がありました。
アメリカを中心にITバブルは発生しましたが、日本でもその影響により多くのベンチャー企業が生まれました。
しかし、バブルという名のとおり、10年ほどで終焉を迎えました。
本記事では、ITバブルが起こった背景やバブルが弾けた原因について解説します。
ITバブルとは
1990代に、マイクロソフト社が発表したWindows95がきっかけで、インターネットが急速に発展しました。
パソコン自体は1980年代からありましたが、やはりITバブルの起点になったのはWindows95の登場です。
パソコンやインターネットが一般的に普及していくことで、人々の生活や購買パターンは劇的に変化します。
パソコンなどが普及するまでは、海外の情報を入手するのは衛星中継や海外電話、海を通じての輸入に頼らなければなりませんでした。
しかし、インターネットにより、海外とも簡単に通信できるようになり、経済はグローバル化し、人々の生活は激変しました。
グローバル化により、IT産業は一気に火がつき、当時衰退気味だった自動車産業に代わる、新しい産業として大成功します。
新しい産業の大成功によって、アメリカの景気は急速に上昇。
投資家たちは、インターネットや情報技術を提供する企業に勝機を見出し、株価が上がる前に買い占めようとする動きが活発化しました。
この活発化した現象のことをITバブル(ドットコムバブル)と呼びます。
投資家たちは、利益をまだ出しておらず、かつ事業内容も明確ではない企業であっても、「インターネットビジネス」と名乗っていれば、膨大な投資を行っていました。
投資家たちにとって、IT専門用語がびっしり書かれた事業計画書を理解することは難しかったのですが、誰よりも利益を得たいがために、内容を理解する前にどんどん投資していたのです。
結果、内容を伴わない無謀なベンチャー企業が増え、アメリカのシリコンバレーを中心に、新興企業が次々と生まれました。
しかし、その流れは長くは続きません。2000年をピークに株価は下がりITバブルは崩壊します。
ITバブル崩壊の原因と背景
加熱していたITブームは、2000年を機に一気に終息へと向かい始めます。
行き過ぎのブームに対する世の中の警戒心が高まり出したのです。
ブームが終わると、急速にITバブルは崩壊へと向かいます。
ITバブル崩壊の原因は主に、以下のようなものです。
・高騰した株価に疑問を持つ人が増えた
・赤字経営のITベンチャーが増え、警戒心が高まった
・パソコン機器の普及が進み過ぎた影響で、市場が飽和した
ITバブルの崩壊はリーマンショックの原因となったサブプライムローンや、アジア経済危機の原因なったタイバーツの暴落のような、明確な原因はありません。
元をたどると、ITバブルは実態のない産業に人々が熱を上げていただけで、冷めることにより、通常の経済に戻ったということです。
つまり、ブームに乗った大衆の心理が、普通になったのです。
ITブームの到来
そもそも、ITブーム自体はなぜ起きたのかというと、やはり発端はマイクロソフトのWindows95の登場です。
コンピューターやソフトウェアだけでいうと、1980年代からすでに一般的に普及は進んでいました。
それまでも、インターネット自体は存在していました。
しかし、操作性が高く、かつ安価で手に入れやすいWindows95は、パソコンやソフトウェアの業界に革命を起こし、一気にインターネットはブームになったのです。
日本でも、ITブームの波に乗り多くの企業が誕生しました。
ソフトバンク、楽天、Yahoo! JAPAN、ライブドアなどは代表的な例です。
また、東芝、富士通、NECなどのコンピューター関連会社、NTTやドコモ、KDDIといった携帯電話関連企業への投資も盛んに行われていました。
逆に、ITブーム時に絶頂を迎え、2003年の不正により一気に株価を下げ、バブルとともに終焉した光通信という企業もあります。
この時期をきっかけに、日本のITバブルも終息に向かいます。
ちなみに、ITブームによりマイクロソフト社の時価総額は、一時6,000億ドルを超えます。
創業者だったビル・ゲイツは、一気に世界のトップクラスの大富豪に上り詰めました。
ITバブルが起きても生き残った企業
1995年〜2000年にかけて高騰したIT産業ですが、ITブームの終焉により、株価は一気に急落します。
そして、需要が増え、製品を作り続けたために在庫を抱える企業が増え、その結果、赤字になり倒産する企業も出てきます。
2000年から2002年にかけて、アメリカでは主に製造業の人員削減が行われ、2002年のアメリカIT関連失業者数は56万人に達しました。
また、株価の暴落を受け、多くの通信関連サービスを提供する企業が倒産に追い込まれました。
そんなITバブルが弾けても、生き残ったIT企業も多く存在します。
・アマゾン
・Yahoo
・ebay
など
こうして見ると、生き残ったのは一部の有力なベンチャー企業のみです。
ITブームの波に乗って、現れたベンチャー企業はほぼ淘汰され、現在でも人々や社会に必要にされ、成長し続けている企業だけが生き残っています。
どの産業にも言えることですが、ITベンチャー企業が1995年ごろから急速に増え出したのは、やはり時代の波によるものです。
やがて、投資家や人々の熱は冷め、結果として残るのは、本当に実力のある企業だけです。
ITバブル崩壊からの復活
一説によると、ITバブル崩壊のきっかけを作ったのは、2001年9月11日に起こった同時多発テロとも言われています。
事実、2001年の同時多発テロが起きた9月の、NYダウ工業株30種平均のチャートは一気に下がっています。
しかし、これはIT関連企業の株に限定されず、経済全体に言えることでした。
実際IT産業は、先にも述べた通り、2000年ごろから下火になっています。
ブームの時に作り過ぎた在庫を抱える工場は増え、需要と供給のバランスが崩れ、雇用は減少していました。
ITバブル崩壊と同時多発テロによるアメリカ市場の大混乱に相まっって、一時アメリカの経済は低迷します。
その後、アメリカの低迷した経済の穴を埋めたのは、実はアフガニスタンの紛争です。
ITバブル崩壊を救ったのは戦争だった!?
アフガニスタンの紛争でアメリカの経済は復旧しました。
つまり、ITバブル崩壊から受けた経済低迷を救ったのは戦争だったのです。
アフガニスタン紛争とは、2001年9月の同時多発テロの首謀者であったオサマビンラディン氏への報復として、アメリカ合衆国が「対テロ戦争」と称し、当時のアフガニスタン政権のあったタリバンを攻撃した出来事です。
アメリカでは同時多発テロの影響で個人消費は低下し、経済、流通ともに麻痺して景気は悪くなる一方と見られていました。
しかし、予想と反してアメリカ経済は、テロによる経済低迷から復活し、株価は上昇しました。
アメリカ政府がアフガニスタン紛争の戦費や、被害を受けた町の復旧支援を増大させることにより、国内の景気回復が早まったのです。
政府が戦費を使うことで経済は回復します。
攻撃をするための新型兵器を開発する、兵器に使うソフトウェアやシステムなどの需要も上がります。
基地同士や兵士とのやり取りに使うGDPを搭載した通信機器や夜間暗視スコープなど、これらはすべてIT技術によるものです。
そのため、IT産業や機械産業などの需要が増え、結果、アメリカの経済は回復したのです。
まとめ
ITバブルが起こった背景やバブルが弾けた原因を解説してきました。
ITブームが巻き起こったのは、そもそもWindows95が発表されたことが発端で、一気に通信産業に投資家たちが、熱を上げ出したからです。
しかし、そのバブルはいつか弾けます。
ITバブルもやがて、終焉を迎えることになりました。
今、その当時から残っているIT企業は、影響力がある企業ばかり。
やはり、いつの時代も世の中に必要とされる企業やサービスが残っていくということです。
現在でも、AIの発達などにより、再び経済バブルのような出来事が起こらないとも限りません。
そんな時は、時代は流れを冷静に俯瞰する目線が必要になりそうです。